わが忘れなば

備忘録の意味で。タイトルは小沢信男の小説から。

オープンアクセス誌向けのソーカル事件

ポール・J・シルヴィア『できる研究者の論文生産術』(高橋さきの訳、講談社、2015)という本を読んでます。心理学者が書いた「論文をなかなか書かない学者」の言い訳を粉砕する本で、「一気書き」に逃げるよりも、きちんとスケジューリングして少しづつ書い…

『アメリカン・スナイパー』感想

だいぶ時間が経ってしまったが、 2 月 22 日にクリント・イーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』を見たので、その感想をまとめておこう(といっても twitter に投稿したものをまとめ直しただけですが...)。 (一応、ネタばらしがあるので、注意喚…

(アメリカの)保守派は(アメリカの)リベラルより事実を曲解する度合いが強いという研究の紹介の紹介

クリス・ムーニーというアメリカ合衆国のジャーナリストの Salon.com の少し古い記事( 2012/8/27 )が面白そうなテーマだったので、読んでみた。このコラムの内容は、ある共和党下院議員のとんでもない暴言(2012)をマクラにして、人は一般的に自分の信念…

ウソの自白に関する本二題ー『自白の心理学』と『本当は間違っている心理学の話』

冤罪の発生、とりわけ犯人でない人がウソの自白をしてしまう現象について、心理学的に考察した本を二冊読んだ。 浜田寿美男『自白の心理学』(岩波新書) スコット・O・リリエンフェルド、スティーヴン・ジェイ・リン、ジョン・ラッシオ、バリー・L・バオア…

「男大空ハイライト」を発掘

今はなきとあるサイトの「雁屋哲アラカルト」というコーナにあった『男大空』というマンガのあるシーンのセリフをまとめたページを webarcheives から発掘してきました。このページは、すごくナイスだと思うのになくなって読めなくなってしまうのは残念だっ…

旧軍隊で行われた私刑

古山高麗雄『二十三の戦争短編集』を読みかえしていたら。 若い人のために、旧軍隊で行われた私刑についても、説明しておこう。 とても全部は書ききれないが、ビンタにも、対向ビンタといって、上級者は自分では手を下さず、二人を向かい合わせて、互いに殴…

新無神論者たちのイスラモフォビア

CJ WERLEMAN (1) という批評家のアメリカ合衆国における新無神論ムーブメントに関する記事を Salon.com というオンライン雑誌でいくつか読んだら、面白かったので、ちょっとまとめてみマス。 新無神論ムーブメントというのは、911 以後米国で活発になった世…

Austin Gerig(2014)「多世界はあるか?」("Are There Many Worlds?")

arXiv で見つけた文献*1。ずばり、「多世界はあるか? 」("Are There Many Worlds?")というタイトルで、科学的に多世界の存在を検証する方法を提唱している論文らしい。 アブストラクト: 他の世界の存在は、科学的に証明することが不可能でありそれゆえ哲学…

Nick Bostrom"Anthropic Bias"(2002) 第二章

Nick Bostrom "Anthropic Bias"(2002) 第一章 - わが忘れなばの続きです。 Nick Bostrom"Anthropic Bias(2002)"の第二章です。 とりあえず、イアン・ハッキングの「逆ギャンブラーの誤謬」が出てくる第三節まで訳しました。追記していく予定です。(2014/01/…

Nick Bostrom "Anthropic Bias"(2002) 第一章

人間原理の哲学者で、「シミュレーション論法」とかでも有名な Nick Bostrom の著書 "Anthropic Bias"(2002)の第一章を訳しました。 誤訳などのご指摘、コメントをくだされば幸いです。(ブログのコメント欄か、プロフィールに書いてあるメール・アドレス(fr…

J.リチャード・ゴットIII「われわれの未来の展望に対するコペルニクス原理の含意」(1)

J.リチャード・ゴットIIIのImplications of the Copernican principle for our future prospects(Nature 363, 315 - 319 (27 May 1993); doi:10.1038/363315a0) 翻訳その(1)です。 この論文は、J.リチャード・ゴットIIIの『時間旅行者のための基礎知識』の…

人間原理、文献まとめ(1) Dicke、CarterからBarrow&Tipplerまで

人間原理関係の文献まとめのその(1)です。George.F.R.Ellis,"Editorial note to: Brandon Carter, Large number coincidences and the anthropic principle in cosmology",gen Relativ Gravit(2011)43:3213-3223 をもとにまとめました。(DOI とかリンクとか…

Brandon Carter 「巨大数の一致と宇宙論における人間原理」(4)

Brandon Carter 「巨大数の一致と宇宙論における人間原理」(3) - わが忘れなばの続きです。 第五章 世界アンサンブルと重力定数 最後の手段として、それ以上強い物理学的な言説がないときに、強い人間原理に基づいた予測を、「世界アンサンブル」という観…

Brandon Carter 「巨大数の一致と宇宙論における人間原理」(3)

Brandon Carter 「巨大数の一致と宇宙論における人間原理」(2) - わが忘れなばの続きです。 第四章 強い人間原理による予測 次は、第五章と議論を訳します。

Brandon Carter 「巨大数の一致と宇宙論における人間原理」(2)

Brandon Carter 「巨大数の一致と宇宙論における人間原理」(1) - わが忘れなばの続きです。第二章と第三章を訳しました。 2.伝統的な種類の予測Bondi のリストにある最初の「巨大数の一致」は、恒星の大きさや色はさまざまな種類に渡っているのに―白色…

Brandon Carter 「巨大数の一致と宇宙論における人間原理」(1)

人間原理を提唱した Brandon Carter の論文、"Large Number Coincidences and the Anthropic Principle in Cosmology - Springer"(1974)の序章("introduction")の翻訳です。ロバート・H・ディッケ 「ディラックの宇宙論とマッハ原理」―「物理学者を作るの…

ロバート・H・ディッケ 「ディラックの宇宙論とマッハ原理」―「物理学者を作るのに炭素が必要だということはよく知られているのだ」

ロバート・H・ディッケの論文"Dirac's Cosmology and Mach's Principle" (Nature 192, 440 - 441 (04 November 1961), doi:10.1038/192440a0) の翻訳です。[]内は訳注です。 論文といっても、 1 ページ強の「編集者への手紙」("Letter to editor")です。 …

”ぼくがキライなドクターは四人、Dr. フロイト、Dr. ジバゴ、Dr. シュバイツァー、Dr. カストロだ! ”―『ストロング・オピニオンズ』 よりナボコフの1968年のインタビュー

V.ナボコフの『ストロング・オピニオンズ』("Strong Opinions"、1973)から、1968年9月3日に行われた Nicholas Garnham によるインタビューを紹介。(以前のナボコフや”ストロング・オピニオンズ”間連のこのブログの記事はここに。"ナボコフ" - 記…

はてダを更新しました。

別ブログを更新しました。佐々木実『市場と権力―「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(講談社)感想と人名索引 - fromAmbertoZen の読書感想文です。

ナボコフ家の人々の共感覚についてや「現実とは主観的なものだ」という意見、『ロリータ』創作余談などがおもしろかった、ナボコフのBBCインタビュー――”Strong Opinions”から

ウラジミール・ナボコフのインタビューや編集者への手紙、雑誌に載せた記事を収めた本、"Strong Opinions"(1973)についてはこれまでも本ブログで何回か面白そうなところを取り上げてきた。たとえば、ここ”考えることは天才的、書くものは並はずれた作家の…

「耳にバナナが詰まってますよ!」「すみません、よく聞こえないんです。耳にバナナを詰めているもので」というョークの起源が知りたい!

伊丹十三の『ヨーロッパ退屈日記』(ポケット文春)に出て来る小咄、電車で隣り合わせた紳士が耳にバナナを詰めていたので、意を決して「耳にバナナが詰まってますよ!」と言ったら「すみません、よく聞こえないんです。耳にバナナを詰めているもので」と返…

四日市の水質汚染について、原因企業を追求し、石橋政嗣の国会論戦に情報を提供した「公害 G メン」田尻宗昭を中心に-田尻宗昭『四日市・死の海と闘う』、『公害対策最前線』(岩波新書)、若宮啓文『忘れられない国会論戦― 再軍備から公害問題まで』(中公新書)感想

若宮啓文『忘れられない国会論戦―再軍備から公害問題まで』(中公新書、1994)という本を読んで、海上保安庁の役人で、四日市の水質汚染の原因企業であった石原産業を摘発し、その後美濃部都政で公害対策を担当した田尻宗昭という人を知った。この人が『忘れ…

アラン・ウッド、碧海純一訳『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』(1978、木鐸社)感想(2)

『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』の感想続き。 ウッドが、ラッセルの発想法や研究・執筆態度について述べている章「天才のしごと」で興味深い指摘があった。ラッセルは、最初に書いた原稿ですでに完璧な文章になっていて、ほとんど全く推敲というも…

アラン・ウッド、碧海純一訳『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』(1978、木鐸社)感想(1)

アラン・ウッドによるバートランド・ラッセル(1872-1970)の伝記『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』(1978、木鐸社)を読んだ。高村夏輝訳『哲学入門』(2005、ちくま学芸文庫)の訳者解説に、ラッセルの生涯を知るには「読み物として面白いのはアラ…

花田清輝「サラリーマン訓」

花田清輝「サラリーマン訓」(『増補・冒険と日和見』(創樹社、1973))が、会社社会における人間関係のあるべき姿としてとても示唆的だったので、感銘を受けた部分を一部引用してみました。 入社した以上、社長をはじめ、すべて、長と名のつく社の幹部諸君…

「アイン・ランドの著作と哲学への読者案内」

アイン・ランドの"Anthem"のペーパーバックを買ったら、ランドの生涯や著作についての簡単な解説が巻末についていた。町山智広『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』(2012、講談社)に紹介されていた Anne Conover Heller の"Ayn Rand and the world she made(2…

花田清輝・吉本隆明論争 (その 2、「ユートピアの誕生」(『復興期の精神』より))

1950年代半ばから1960年代初頭にかけて行われた、花田・吉本論争に関わりのある批評・著作を読んでいくシリーズとして、まず『復興期の精神』所収の「ユートピアの誕生」を読んだ。戦時下に連載され、戦後になって単行本として刊行された『復興期の精神』の…

『ナボコフの文学講義』と"Strong Opinions"からナボコフの現実に関する意見

『ナボコフの文学講義 下』(野島秀勝訳、河出文庫、2012)のフランツ・カフカ「変身」講義に、客観的な「現実」というものが主観的な現実を平均して抽出した産物でしかないと主張する、こんな見解が書いてあった。 「外套」、「ジキル博士とハイド氏」、そ…

アンスコム「トルーマン氏の学位」 (2/2)

アンスコム「トルーマン氏の学位」 (1/2) - わが忘れなばの続きです。 近刊の松元雅和『平和主義とは何か』(中公新書、2013)を読んだのですが、 平和主義に向けられる典型的な疑問にこたえる形で、平和主義を絶対平和主義と平和優先主義に分けて説明を精緻…

花田清輝・吉本隆明論争 (その 1、関連した論文)

花田・吉本論争の全体像を把握したくなったので、未読・既読を含めて論争を論じた本を、ぼくの気付いた範囲でまとめてみた。自分用の読書計画表です。 ぼくの目にとまったものを挙げただけで、網羅的ではないです。他にもいろいろあるとは思うので、だんだん…

荷風の日記での帝国主義批判、日本兵の残虐行為を伝える”町の噂話”など‐『摘録 断腸亭日乗』(磯田光一編)感想

永井荷風の『摘録 断腸亭日乗』(磯田光一編、上下、岩波文庫)はいつも適当なところを開いてパラパラ読んでいるだけで、未だ通読したことはないが、太平洋戦争がいよいよ始まろうとする 1941 年あたりが一番興味深い様な気がする。摘録 断腸亭日乗〈上〉 (…

「アメリカ宗教保守層の膨張の説明」(飯山雅史『アメリカの宗教右派』(2008、中公新書ラクレ)から)

twitter で次のように発言したら、意外に RT が多くて、多くの人に読まれたようなので、ちょっと補足。「ネトウヨ=弱者」説と少し対応するといえる気がするが、米でも宗教右派が台頭したことを「宗教保守層=落ちこぼれ」説で説明する人がいたそうだが、実…

アンスコム「トルーマン氏の学位」 (1/2)

イギリスの哲学者、G.E.M.アンスコムと原爆投下を批判したアンスコムの論文「トルーマン氏の学位」について知ったのは、三浦俊彦『戦争論理学』(二見書房)と加藤尚武『バイオエシックスとは何か』(勁草書房)を読んだとき。(どちらを先に読んだかは、忘…

批評や批判が自分に当てはまることを”ブーメラン”で例えたのは、花田清輝が最初!?

よく、批判が発言者にも当てはまってしまうことや発言者自身にこそふさわしい批判をしてしまったことを風刺して「ブーメラン」という表現を使うのをインターネット上の論争などで見るけれど、(ぼくのTL上でも昨日、一昨日と一回ずつ見た)いつごろから使われ…

”政治家”昭和天皇の政治的意思と能力―”立憲君主”の”戦争責任”

前回の記事について、twitter上で Kodama Shigeaki( @takosantaro )さんに永井和『青年君主昭和天皇と元老西園寺』(京都大学学術出版会,2003)とApeman さんのブログ記事を、また id:Apeman さんからもコメント欄にて、Apeman さんのブログ記事における…

昭和天皇による田中義一内閣倒閣‐半藤一利『昭和史』をもとに

張作霖爆殺事件の責任者の処分を巡って、昭和天皇が田中義一首相を辞職に追い込んだ経緯について、半藤一利『昭和史』(平凡社ライブラリー、2009、親本は平凡社、2004)をもとに簡単にまとめます。同書の第一章「昭和は”陰謀”と”魔法の杖”で開幕した‐張作霖…

ネオコンへの傾倒ぶりに驚き、戸塚ヨットスクール擁護には吐き気を覚えた‐鮎川信夫『時代を読む』を読んだ

週刊連載文春コラムの1982-85分、100篇を収めた鮎川信夫(1926-1986)『時代を読む』(1985、文藝春秋)を久々に読んだ。時代を読む―鮎川信夫・コラム批評100篇 1982~1985 (1985年)作者: 鮎川信夫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1985/04メディア: ?この商品…

『水野成夫の時代』

という本の存在に気づいていませんでした。近いうちに入手して感想を書きたいです。 やはり一番気になるのは、「財界の秘密組織」こと「共同調査会」の詳細ですが、『メディアの支配者』でも詳しいことはもう分からないような事が書いてあったので、期待はし…

『ナボコフの文学講義』からカフカ「変身」講義の感想

むかし、TBSブリタニカから出ていたナボコフの『ヨーロッパ文学講義』が、『ナボコフの文学講義』として河出文庫から上下巻で復刊された。原題は"Lecture on Literature"なので、今回の訳題の方が原題に忠実なタイトルだ。ナボコフが"Strong Opinions"で語っ…

田中角栄について二点メモー田中の憲法・再軍備観とロッキード陰謀論

ちょとしたきっかけで、田中角栄について、何冊か読み漁ったので、気になったことを忘れないうちにメモ程度にまとめておきたい。(最近読んだことをすぐ忘れる。)読んだのは、次の諸著作だ。 早野透『田中角栄 戦後日本の悲しき自画像』(中公新書,2012) …

元731部隊の研究者への科学者による批判-上平恒『水とはなにか』感想

以前、731部隊について勉強したことをまとめて、一部ブログ記事にしたが、防疫給水部が設立されるまでの経緯を書いたところで力尽きてしまった。気にはなっていいるのだが、常石敬一の『医学者たちの組織犯罪ー関東軍第七三一部隊』(朝日文庫、1999、親本は…

若き日の花田清輝を自伝執筆のための秘書として雇っていたというイー・トンハ氏ってどういう人物?-『別冊新評 花田清輝の世界』感想

花田清輝は、ぼくの大好きな批評家で、このブログの最初の記事でも『冒険と日和見』(増補版、1973年、創樹社)を取り上げている。一時期ちょっと読んでない期間があったけれど、最近になって、未読だった『近代の超克』や『恥部の思想』を読んだら、やはり…

「切腹」「芸者」「日本語は抽象思考に向かない」などのステレオタイプの日本・日本人観には、疑問だが、戦争指導者・知識人に対する批判は、辛辣かつ的確。-ロベール・ギラン『日本人と戦争』感想

ロベールギランの『日本人と戦争』(根本長兵衛、天野恒雄訳、朝日文庫、1990)、昔読んだ本で印象に残っていたが、別の本を探して本棚を漁っていたら出てきたのでを読んだ。1938-46の期間日本にいた(帰れなかった)フランス人ジャーナリストが書いたアジア太…

”風の生涯”水野成夫のフィクサーぶり

先月(2012年12月)の日本経済新聞の「私の履歴書」欄は、元首相の森喜朗が書いていたが、産経新聞に入社するにあたって社長の水野成夫(1899-1972)に口利きしてもらったというエピソードがあった。 水野成夫のことは、同じく日本経済新聞に昔連載されていた…

アイン・ランドとナボコフ-奇妙なカップル

先日、前々回のエントリーとの関係でナボコフとサルトルについて調べていたら、二人の論争について書いている論文を見つけ、同じ人が、アイン・ランドとウラジミール・ナボコフを比較研究した論文を見つけた。D. BARTON JOHNSON という人の「奇妙な同衾者-ア…

「ポジティブな性格破綻者」の肖像-倉田啓明『倉田啓明橘作集 稚児殺し』、「誘惑女神」、松本克平『私の古本大学』(2)

(この記事は、「ポジティブな性格破綻者」の肖像-倉田啓明倉田啓明『倉田啓明橘作集 稚児殺し』、「誘惑女神」、松本克平『私の古本大学』(1)の続きです。)「誘惑女神」による偽作事件以前に啓明が発表した作品について、西村賢太「異端者の悲しみ」と松…

ナボコフによるサルトル『嘔吐』(英訳)書評の感想-(V. ナボコフ, "Strong Opinions" から "SARTRE'S FIRST TRY")

前の記事で、「ナボコフは、フロイトやドストエフスキーは結構読んでそうだけど、サルトルは何読んで嫌いになったのかな? と思った。」と書いたが、"Strong Opinions"の後半のエッセイ編の二つ目の記事にナボコフの英訳版『嘔吐』書評が載っていた。「サル…

”考えることは天才的、書くものは並はずれた作家のもの、喋ると子供みたい”-V. ナボコフ, "Strong Opinions" の感想

ウラジミール・ナボコフの"Strong Opinions"(1973)を読んだ。面白かったので、少し紹介してみたい。 この"Strong Opinions"は、「ロシア生まれで、イングランドで教育を受けた、アメリカの作家("An American writer, born in Russia and educated in England…

「ポジティブな性格破綻者」の肖像-倉田啓明『倉田啓明橘作集 稚児殺し』、「誘惑女神」、松本克平『私の古本大学』(1)

「本についての本」が好きだ。その中でも古書に関する本、さらに言えば、好事家が、珍しい古本を漁って発見した過去の埋もれた人物の事績を徐々に発掘していく過程をリアルタイムで伝えてくれるタイプの作品は、ゴシップ的な楽しみやマイナー嗜好を満足させ…

ひよどり祥子『死人の声を聞くがよい』

ホラー漫画の熱心な読者とはとても名乗れない。好きなマンガ家の中にホラーマンガ家に分類される人たちが何人かいるという程度が正確な表現だと思う。楳図かずお、古賀新一、藤子不二雄Ⓐ、日野日出志、伊藤潤二、丸尾末広、御茶漬海苔といったマンガ家たちの…