わが忘れなば

備忘録の意味で。タイトルは小沢信男の小説から。

ナボコフ

秋草俊一郎『アメリカのナボコフ―塗りかえられた自画像』

去年のうちによんだ。アメリカ時代以後のナボコフの作家としての活動(死後の活動、つまり遺族による遺稿出版などの活動も含む)と受容について研究した本。亡命ロシア人社会では有名だが英語圏では無名の作家という状態でナチスを逃れてアメリカに渡ったナ…

最近読んだ本と読んでいる本

のうちいくつか。ラヴィ・ティドハー『黒き微睡みの囚人 』有楽町の三省堂で 1 月 30 日に買った。通勤中の車内と週末で、100 ページほど読んだ。 1933 年に政変が起きて、ヒトラーが失脚し、共産主義ドイツが誕生。ヒトラーは、イギリスに亡命し、私立探偵…

”ぼくがキライなドクターは四人、Dr. フロイト、Dr. ジバゴ、Dr. シュバイツァー、Dr. カストロだ! ”―『ストロング・オピニオンズ』 よりナボコフの1968年のインタビュー

V.ナボコフの『ストロング・オピニオンズ』("Strong Opinions"、1973)から、1968年9月3日に行われた Nicholas Garnham によるインタビューを紹介。(以前のナボコフや”ストロング・オピニオンズ”間連のこのブログの記事はここに。"ナボコフ" - 記…

ナボコフ家の人々の共感覚についてや「現実とは主観的なものだ」という意見、『ロリータ』創作余談などがおもしろかった、ナボコフのBBCインタビュー――”Strong Opinions”から

ウラジミール・ナボコフのインタビューや編集者への手紙、雑誌に載せた記事を収めた本、"Strong Opinions"(1973)についてはこれまでも本ブログで何回か面白そうなところを取り上げてきた。たとえば、ここ”考えることは天才的、書くものは並はずれた作家の…

アラン・ウッド、碧海純一訳『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』(1978、木鐸社)感想(2)

『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』の感想続き。 ウッドが、ラッセルの発想法や研究・執筆態度について述べている章「天才のしごと」で興味深い指摘があった。ラッセルは、最初に書いた原稿ですでに完璧な文章になっていて、ほとんど全く推敲というも…

『ナボコフの文学講義』と"Strong Opinions"からナボコフの現実に関する意見

『ナボコフの文学講義 下』(野島秀勝訳、河出文庫、2012)のフランツ・カフカ「変身」講義に、客観的な「現実」というものが主観的な現実を平均して抽出した産物でしかないと主張する、こんな見解が書いてあった。 「外套」、「ジキル博士とハイド氏」、そ…

『ナボコフの文学講義』からカフカ「変身」講義の感想

むかし、TBSブリタニカから出ていたナボコフの『ヨーロッパ文学講義』が、『ナボコフの文学講義』として河出文庫から上下巻で復刊された。原題は"Lecture on Literature"なので、今回の訳題の方が原題に忠実なタイトルだ。ナボコフが"Strong Opinions"で語っ…

アイン・ランドとナボコフ-奇妙なカップル

先日、前々回のエントリーとの関係でナボコフとサルトルについて調べていたら、二人の論争について書いている論文を見つけ、同じ人が、アイン・ランドとウラジミール・ナボコフを比較研究した論文を見つけた。D. BARTON JOHNSON という人の「奇妙な同衾者-ア…

ナボコフによるサルトル『嘔吐』(英訳)書評の感想-(V. ナボコフ, "Strong Opinions" から "SARTRE'S FIRST TRY")

前の記事で、「ナボコフは、フロイトやドストエフスキーは結構読んでそうだけど、サルトルは何読んで嫌いになったのかな? と思った。」と書いたが、"Strong Opinions"の後半のエッセイ編の二つ目の記事にナボコフの英訳版『嘔吐』書評が載っていた。「サル…

”考えることは天才的、書くものは並はずれた作家のもの、喋ると子供みたい”-V. ナボコフ, "Strong Opinions" の感想

ウラジミール・ナボコフの"Strong Opinions"(1973)を読んだ。面白かったので、少し紹介してみたい。 この"Strong Opinions"は、「ロシア生まれで、イングランドで教育を受けた、アメリカの作家("An American writer, born in Russia and educated in England…