J.リチャード・ゴットIIIのImplications of the Copernican principle for our future prospects(Nature 363, 315 - 319 (27 May 1993); doi:10.1038/363315a0) 翻訳その(1)です。
この論文は、J.リチャード・ゴットIIIの『時間旅行者のための基礎知識』の第五章に出てくる未来予測法の出典にあたる論文です。
コメント、誤訳指摘、改訳案などお寄せいただければ、ありがたく存じます。
われわれの未来の展望に対するコペルニクス原理の含意
(要約)
ランダムな知的観測者であること仮定するだけで、われわれの種の存続する期間が、95% の信頼水準で、 0.2 万年から 8 万年の間であることが導かれる。続く考察は、われわれが銀河系に殖民できそうもないこと、われわれが知的存在の人口の中間値よりも多くの人口を有しているらしいことを示唆している。
コペルニクス革命によって、われわれは、特別な理由がない場合は、われわれが宇宙において特権的な位置を占めていると仮定することは間違いであるということを学んだ。ダーウィンは、起源ということに関しては、われわれは他の種より特別であるということはないということを示した。普通のスーパークラスタ内の普通の銀河系内の普通の恒星の周りを回るわれわれの位置は、ますます特別でないように見える。われわれが特別な位置にいないという考えは、宇宙論において重要なもので、ここから一般相対性理論における均一で等方的な Freedman モデルが導かれた。このモデルは、宇宙マイクロ波背景放射のスペクトルの予測という素晴らしい成功をおさめた。宇宙物理学においては、コペルニクス原理が役に立つ。なぜならば、知的観測者の存在する全ての場所について、宇宙には、わずかな特別な場所と多くの特別でない場所が存在し、われわれは、おそらく特別でない場所に住んでいるからだ。この考えを用いて、様々な観測可能なものの将来の存続期間を予測することができる。そのうちには、われわれの種の存続期間も含まれている。私は、さらに遠未来の、地球外知性探索(SETI)と宇宙旅行への応用を議論する。
デルタ t 論法
われわれが測定するものは何であれ、時点 と の間でのみ観測されうると仮定すれば、
に何も特別なことがないならば、は、この区間にランダムに位置していると期待できる。予測は、ほとんどいつも過大評価か、過小評価である。もし が 0と 1 の間を一様分布する乱数とすれば、である確率は、 である。つまり、
(1)
(95% 信頼レベル)
となる。
同様に
(2)
(50% 信頼レベル)
式(1) の意味は、何か観測したものの過去の経過時間は、過去の災難に対する耐久性だけでなく、これから起こるそれを観測出来なくするような災難への耐久性への簡単な目安になっているということだ。なぜならは、式(1)が成り立つために必要な条件は、観測者としての位置が特別なものではないということだけだからだ。簡単に概観するために述べると、1961年に、私は始めてストーンヘンジ(年)とベルリンの壁(年)を見た。私が壁のランダムな目撃者であると仮定すれば、私はとの間の時間にランダムに位置していると期待される(は壁が破壊されるか、誰も訪れなくなったときを指す)。壁は20年後に崩れたので、であり、式(1)の予測する95% 信頼限界の範囲内に収まっている。(P=0.95の)デルタ t 論法の応用は、ストーンヘンジが、24年後の今日も観測可能であることも正しく予測している(式(1)から年である)。1977年に、私はソ連()を訪れた。その時代においては、ソ連の将来までの存続は一般的に信じられていたが、その後 14 年しか続かなかった(であり、式(1)の限界と整合的である)。式(1)は、私の訪問がソ連の崩壊を引き起こしたから、成り立つのではない。後になって、私の訪問が特別なものでないと分かったからだ。Nature は、123 年に渡って発行されてきた。(P=0.95の)デルタ t 論法は、将来の出版は、 3.15 年以上、4,800 年以下続くと予測する。
- 作者: J・リチャード・ゴット,林一
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続きは、時期を見ておいおいと。(追記の予定あります)