わが忘れなば

備忘録の意味で。タイトルは小沢信男の小説から。

1936 年大統領選、Literary Digest 誌の予想おおはずし

N.Bostrom の "Anthropic Bias"(2002)Anthropic Bias - complete text | anthropic-principle.comより。

 1936 年、Literary Digest 誌は、きたる大統領選挙の結果を予測するために世論調査を行った。彼らは、Alt Landon という共和党の候補が大差をつけて勝利するだろうと予測した。実際の選挙では現職の Flanklin D. Roosevelt が地すべり的な勝利を果たした。Literary Digest 誌は、主に電話帳や車両登録標から調査票を送った人々の意見を集めていた。そのために、重大な選択効果を招いてしまった。不況地域に住む貧しい人々は、Roosevelt への熱心な支持者の一群であったが、電話やクルマを持たない人が多かった。方法論的にもっと洗練された世論調査であれば、もっと代表的な調査集団を選ぶか、すくなくとも既知のあるいは疑わしい選択効果を考慮して予測したであろう。(注)

(注) Literary Digest 誌はこの悪名高い世論調査のために大きく世評を損なってしまい、George Gallup などの新世代の世論調査にとって代わられたためほどなくして廃業した。George Gallup は、1936年の選挙を正しく捉えたただけでなく、Literary Digest 誌の予測がどのようなものであるかを 1% の範囲で予測した。その際に、 Digest 誌のわずか千分の一のサンプルしか用いなかったが、もっとうまく選択効果を避けていた。この悪名高い 1936 年の調査は調査研究の歴史において選択バイアスの典型例としての位置を得ているし、この教科書(Squire 1988)で誤差をうむ無回答による偏りと同じくらい重要であると言及されている。