わが忘れなば

備忘録の意味で。タイトルは小沢信男の小説から。

2012-01-01から1年間の記事一覧

アイン・ランドとナボコフ-奇妙なカップル

先日、前々回のエントリーとの関係でナボコフとサルトルについて調べていたら、二人の論争について書いている論文を見つけ、同じ人が、アイン・ランドとウラジミール・ナボコフを比較研究した論文を見つけた。D. BARTON JOHNSON という人の「奇妙な同衾者-ア…

「ポジティブな性格破綻者」の肖像-倉田啓明『倉田啓明橘作集 稚児殺し』、「誘惑女神」、松本克平『私の古本大学』(2)

(この記事は、「ポジティブな性格破綻者」の肖像-倉田啓明倉田啓明『倉田啓明橘作集 稚児殺し』、「誘惑女神」、松本克平『私の古本大学』(1)の続きです。)「誘惑女神」による偽作事件以前に啓明が発表した作品について、西村賢太「異端者の悲しみ」と松…

ナボコフによるサルトル『嘔吐』(英訳)書評の感想-(V. ナボコフ, "Strong Opinions" から "SARTRE'S FIRST TRY")

前の記事で、「ナボコフは、フロイトやドストエフスキーは結構読んでそうだけど、サルトルは何読んで嫌いになったのかな? と思った。」と書いたが、"Strong Opinions"の後半のエッセイ編の二つ目の記事にナボコフの英訳版『嘔吐』書評が載っていた。「サル…

”考えることは天才的、書くものは並はずれた作家のもの、喋ると子供みたい”-V. ナボコフ, "Strong Opinions" の感想

ウラジミール・ナボコフの"Strong Opinions"(1973)を読んだ。面白かったので、少し紹介してみたい。 この"Strong Opinions"は、「ロシア生まれで、イングランドで教育を受けた、アメリカの作家("An American writer, born in Russia and educated in England…

「ポジティブな性格破綻者」の肖像-倉田啓明『倉田啓明橘作集 稚児殺し』、「誘惑女神」、松本克平『私の古本大学』(1)

「本についての本」が好きだ。その中でも古書に関する本、さらに言えば、好事家が、珍しい古本を漁って発見した過去の埋もれた人物の事績を徐々に発掘していく過程をリアルタイムで伝えてくれるタイプの作品は、ゴシップ的な楽しみやマイナー嗜好を満足させ…

ひよどり祥子『死人の声を聞くがよい』

ホラー漫画の熱心な読者とはとても名乗れない。好きなマンガ家の中にホラーマンガ家に分類される人たちが何人かいるという程度が正確な表現だと思う。楳図かずお、古賀新一、藤子不二雄Ⓐ、日野日出志、伊藤潤二、丸尾末広、御茶漬海苔といったマンガ家たちの…

常石敬一『医学者たちの組織犯罪ー関東軍第七三一部隊』

常石敬一著『医学者たちの組織犯罪ー関東軍第七三一部隊』(朝日文庫、1999、親本は朝日新聞社、1994)を読んだ。本書は、「陸軍軍医学校防疫研究報告第二部」(報告第二部)を中心とした各種資料の研究や七三一部隊の関係者へのヒアリングをもとに部隊の活…

「赴難の学-出陣学徒に餞る」中央公論1943年12月号

秦郁彦の『昭和史の謎を歩く』(下)(文春文庫、1999)を読んでいたら、第36章「教職追放」において「戦後ではお目にかかれない珍品」として中央公論1943年12月号の座談会「赴難の学-出陣学徒に餞る」が紹介されていた。 秦著ではさわりしか引用されていな…

ブログはじめた

タイトルは、小沢信男の小説から採った。小説「わが忘れなば」は、晶文社から出た単行本『わが忘れなば』またその後に出た『東京の人に送る恋文』に収められた。*この道を泣きつつわれの行きしこと わが忘れなばたれか知るらんという短歌をめぐるカメラマン…