ニック・ボストロムが2005年に設立して所長を務めていたオックスフォード大哲学科の Future of Humanity Institute が2024年4月16日づけで閉鎖になったようだ。ボストロム自身ももうオックスフォード大に属していないようだ。(現在は、Macrostrategy Research Initiativeという機関の首席研究員という地位にあるようだ)
僕は、最初にエミール・トレス氏のtweetで知った。
The Future of Humanity Institute has shut down. I'm told that the discovery of Bostrom's racist email, and his shockingly bad "apology" for that email (even referencing social justice advocates as "bloodthirsty mosquitoes" on his website), played a bit part in this development. pic.twitter.com/gDQW8yAvz1
— Dr. Émile P. Torres (@xriskology) 2024年4月17日
Update: Bostrom isn't listed as a faculty member at Oxford anymore.https://t.co/qeCwl0tWv5 https://t.co/8o2ylB5cuj
— Dr. Émile P. Torres (@xriskology) 2024年4月18日
その後、ガーディアン紙にも記事が出ている。
誰もが、去年の「メール事件」の影響なのかと思うところであろう。
ただ、ボストロム自身が、自サイトに載せた「謝罪文」の2023年8月付の追記を真に受ければ、メールの件で研究所が廃止になるということはなさそうだ。
FHIの旧メンバーが作成していると思しきFHIの業績やヒストリーをまとめたサイトでは、以下のような説明が書かれている。
FHI が属する哲学科から研究所への風当たりは前からきつく、'20年からは人事が凍結され、'23年の遅くにはFHIのスタッフの契約を更新しないことが決定し、'24/4/16に研究所が閉鎖になったそうだ。
ちょうど、ボストロムは、Anthropic Bias(2002)、Superintelligence(2014)に続く新著Deep Utopia(2024)を出したタイミングであったので、びっくりだ。
追記(5/2)
ガーディアン紙に本件に関する記事がまた出ていた。Andrew Anthonyというジャーナリストの執筆でトレスにもインタビューしている。スクープ的な新事実にあたる内容はないようだが、FHI発の思想である「効果的利他主義」や「長期主義」を強化版の優生学とみなすタイトルなどトレスの主張にも沿った手厳しいまとめだ。FHIへの逆風としては、ボストロムのメール事件だけでなく、効果的利他主義の擁護者で、ボストロムやFHIとも関係の深いマッカスキルとも親しい起業家のサム・バックマン=フリードの逮捕('22)もあげている。