わが忘れなば

備忘録の意味で。タイトルは小沢信男の小説から。

反PC本の歴史

時ならぬ反PC本の翻訳ラッシュによって、反PC本というか、アンチ・ポストモダン本、アンチ・フェミニズム本の系譜が気になった。某所で見たリストに自分で何冊か付け加えてみた。(読んだ本のリストではないですよ、為念。本の preface や書評を読んでピックアップしています)

[この項、ちょっとづつ増強していきます]

  • Alan Bloom, "The Closing of the American Mind: How Higher Education Has Failed Democracy and Impoverished the Souls of Today's Students" (1987)『アメリカン・マインドの終焉:文化と教育の危機』菅野盾樹訳(1988)
  • Roger Kimball, "Tenured Radicals: How Politics Has Corrupted Our Higher Education"(1990)
  • Dinesh D'Souza, "Illiberal Education: The Politics of Race and Sex on Campus" (1991)
  • Gertrude Himmelfarb, "On Looking into the Abyss: Untimely Thoughts on Culture and Society" (1994)
  • Paul Gross & Norman Levitt, "Higher Superstition: The Academic Left and Its Quarrels with Science" (1994)
  • Alan Sokal & Jean Bricmont, "Fashionable Nonsense: Postmodern Intellectuals' Abuse of Science" (1997)『「知」の欺瞞:ポストモダン思想における科学の濫用』田崎晴明, 大野克嗣, 堀茂樹訳 (2000)
  • Alan C. Kors & Harvey A. Silverglate, "The Shadow University: The Betrayal of Liberty on America's Campuses" (1998)
  • Joanna Williams, "Academic Freedom in an Age of Conformity: Confronting the Fear of Knowledge" (2016)
  • Greg Lukianoff & Jonathan Haidt, "The Coddling of the American Mind: How Good Intentions and Bad Ideas Are Setting Up a Generation for Failure" (2018) 『傷つきやすいアメリカの大学生たち:大学と若者をダメにする「善意」と「誤った信念」の正体』西川由紀子 訳 (2022)
  • Helen Pluckrose & James Lindsay, "Cynical Theories: How Activist Scholarship Made Everything About Race, Gender, and Identity and Why This Harms Everybody" (2020) 『「社会正義」はいつも正しい:人種、ジェンダーアイデンティティにまつわる捏造のすべて』 山形浩生, 森本正史訳 (2022)

反PC本/アンチ・フェミニズム本とまとめてしまうと、Sokal & Bricmont が当てはまらないかなあ。主にアメリカの知識人が、ヨーロッパ(主にフランス)の哲学・社会学の影響を批判した本と言っても良いかも(Bricmont はベルギー人)。あと、ある程度大学とか高等教育が話題になっていることも条件かも。世代論・若者批判的な側面も。だが、そうなると、Sokal & Bricmont などはやっぱり当てはまらない。けど、アンチポストモダン本としては、外したくない。

哲学や社会学が専門でない学者もしくは、アマチュア的な書き手も多い(Paul Gross は生物学者、Norman Levitt と James Lindsay は数学者、Alan Sokal と Jean Bricmont は物理学者)。またこの本が第一作、もしくは初めての話題になった本というケースも多い。

タイトルだけ見ても、Bloom(1987)->Lukianoff & Haidt(2018)はもじりだし、Gross & Levitt(1994)->Sokal & Bricmont(1997)などほのかに真似しているようにみえる。

保守派(ネオコン)〜右派が多いが、Sokal と Bricmont は左派(Bricmontには『人道的帝国主義:民主国家アメリカの偽善と反戦平和運動の実像』が)Gross は、創造説を批判した共著もある。

一応リストアップの根拠(一連の本としてみなされている例示)としては、Bloom, Kimball, D'Souza は、割と並べてあげられているのを複数見たので特にいいでしょう。"Higher Superstition" は、Kimball が書評を書いて Blomm(1988) や Kimball(1990) と並べていました。Himmelfarb は、Sokal が Pluckrose & James Lindsay (2020) のフランス語版の preface で Bloom, Kimball, D'Souza と並べていました。"Higher Superstition" は、Sokal が フランス語版の preface を書いて影響を受けたと述べています。Pluckrose & James Lindsay (2020) にも、Sokal は、フランス語版の preface を寄せています。[この部分は後で増強したいと思います]

もっと増やしたいので、候補を教えてください。