わが忘れなば

備忘録の意味で。タイトルは小沢信男の小説から。

2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

四日市の水質汚染について、原因企業を追求し、石橋政嗣の国会論戦に情報を提供した「公害 G メン」田尻宗昭を中心に-田尻宗昭『四日市・死の海と闘う』、『公害対策最前線』(岩波新書)、若宮啓文『忘れられない国会論戦― 再軍備から公害問題まで』(中公新書)感想

若宮啓文『忘れられない国会論戦―再軍備から公害問題まで』(中公新書、1994)という本を読んで、海上保安庁の役人で、四日市の水質汚染の原因企業であった石原産業を摘発し、その後美濃部都政で公害対策を担当した田尻宗昭という人を知った。この人が『忘れ…

アラン・ウッド、碧海純一訳『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』(1978、木鐸社)感想(2)

『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』の感想続き。 ウッドが、ラッセルの発想法や研究・執筆態度について述べている章「天才のしごと」で興味深い指摘があった。ラッセルは、最初に書いた原稿ですでに完璧な文章になっていて、ほとんど全く推敲というも…

アラン・ウッド、碧海純一訳『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』(1978、木鐸社)感想(1)

アラン・ウッドによるバートランド・ラッセル(1872-1970)の伝記『バートランド・ラッセル―情熱の懐疑家』(1978、木鐸社)を読んだ。高村夏輝訳『哲学入門』(2005、ちくま学芸文庫)の訳者解説に、ラッセルの生涯を知るには「読み物として面白いのはアラ…

花田清輝「サラリーマン訓」

花田清輝「サラリーマン訓」(『増補・冒険と日和見』(創樹社、1973))が、会社社会における人間関係のあるべき姿としてとても示唆的だったので、感銘を受けた部分を一部引用してみました。 入社した以上、社長をはじめ、すべて、長と名のつく社の幹部諸君…

「アイン・ランドの著作と哲学への読者案内」

アイン・ランドの"Anthem"のペーパーバックを買ったら、ランドの生涯や著作についての簡単な解説が巻末についていた。町山智広『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』(2012、講談社)に紹介されていた Anne Conover Heller の"Ayn Rand and the world she made(2…

花田清輝・吉本隆明論争 (その 2、「ユートピアの誕生」(『復興期の精神』より))

1950年代半ばから1960年代初頭にかけて行われた、花田・吉本論争に関わりのある批評・著作を読んでいくシリーズとして、まず『復興期の精神』所収の「ユートピアの誕生」を読んだ。戦時下に連載され、戦後になって単行本として刊行された『復興期の精神』の…

『ナボコフの文学講義』と"Strong Opinions"からナボコフの現実に関する意見

『ナボコフの文学講義 下』(野島秀勝訳、河出文庫、2012)のフランツ・カフカ「変身」講義に、客観的な「現実」というものが主観的な現実を平均して抽出した産物でしかないと主張する、こんな見解が書いてあった。 「外套」、「ジキル博士とハイド氏」、そ…