花田清輝・吉本隆明論争 (その 1、関連した論文)
花田・吉本論争の全体像を把握したくなったので、未読・既読を含めて論争を論じた本を、ぼくの気付いた範囲でまとめてみた。自分用の読書計画表です。
ぼくの目にとまったものを挙げただけで、網羅的ではないです。他にもいろいろあるとは思うので、だんだん読んでいきたい。[] 内は後ろの表で使うつもりのの略称。() 内はコメント。
花田・吉本論争について主題として扱った本とそれに関係する本
- スガ秀実『花田清輝-砂のペルソナ』(講談社、1982)[スガ1](花田の論理的勝利を主張)
- 柄谷行人『反文学論』(冬樹社,1979)[柄谷1] *#(スガの花田論文を肯定的に取り上げた時評)
- スガ秀実『JUNK の逆襲』(作品社、2003)*# [スガ2](磯田光一の花田・吉本観への言及あり)
- スガ秀実『革命的な、あまりに革命的な』(作品社、2003)[スガ3] #
- 鎌田哲哉(編)『LEFT ALONE 構想と批判』[スガ5] *#(スガ秀実との対談パートで、論争への言及あり)
- 好村冨士彦『真昼の決闘』(晶文社、1986)[好村]
- 添田馨『吉本隆明‐論争のクロニクル』[添田]
花田清輝についての本と関係する本
- 別冊新評『花田清輝の世界』(1977)[新評]*#
吉本隆明についての本と関係する本
その他
- 川本三郎「花田清輝の『ふまじめ』」(『同時代を生きる「気分」』)(『展望』、1973/6)[川本] (能く言及される)
- 小田久郎『戦後詩壇私史』(新潮社,1995) *# (『現代詩』など当時の雑誌の状況に詳しい、安保闘争の時の吉本の花田批判が長文引用されている)
- 武井昭夫『わたしの戦後 : 運動から未来を見る : 武井昭夫対話集』( スペース伽耶、 2004)
* は所有している(=探せば出て来るはずの)本。
#は既読。(再読する)
さらに、粉川哲夫「花田清輝と吉本隆明」(別冊新評『花田清輝の世界』)と添田馨『吉本隆明‐論争のクロニクル』をもとに、関連論文を表形式でまとめた。
特に、添田馨『吉本隆明‐論争のクロニクル』の「プレビュー」は非常に素晴らしい労作だった。(1963 の座談会のみ粉川哲夫論文でしか言及されていなかった)
これらを読んで全体像の把握を目指す。
花田・吉本論争に含まれる論文が収められた両者の著作(全集以外)
[] 内は表での略称。
- 『復興期の精神』(「ユートピアの誕生」を含む) [復興] *#
- 『近代の超克』(未来社、1959/6) [近代] *#
- 『乱世をいかに生きるか』(山内書店、1967)[乱世]
- 『もう一つの修羅』(筑摩書房、1961)[修羅]
- 『新編映画的思考』(未来社、1962)[新編映画]
- 『随筆三国志』(筑摩書房、1969)
- 『冒険と日和見』(創樹社、1971/12、増補版 1973/5) [冒日] *#
初出の情報は、添田馨『吉本隆明‐論争のクロニクル』。再録の情報は、別冊新評『花田清輝の世界』。
年代 | 花田清輝 | 吉本隆明 | 両者/どちらかを含む座談会 | 第三者 | 初出・再録 | 直接言及している文献とコメント |
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1955 | 前世代の詩人たち | 『詩学』(1955/1) -> 抒情 | ||||
1956 | 「民主主義文学」批判 二段階転向論 | 『荒地詩集』1956/4 -> 芸抵 | ||||
1956 | 不毛な論争 | 『東京大学学生新聞』 1956/5/14・21合併号 | ||||
1956 | 芸術運動の今日的課題(花田・吉本・岡本潤) | 『現代詩』1956/8 | 三者の座談会・一般的には論争の端緒 | |||
1956 | まえがき -文学者の戦争責任― | 『文学者の戦争責任』 | ||||
1956 | 民主主義文学者の謬見 | 『東京大学学生新聞』1956/10/15、22 | ||||
1956 | 現代詩の問題 | 『講座現代詩第1巻』飯塚書店 | ||||
1956 | 現代詩批評の問題 | 『文学』1956/12 | ||||
1957 | 前衛的な問題 | 『短歌研究』1957/5 | ||||
1957 | ヤンガー・ゼネレーションへ | 『文学』1957/7 | 『ご真影』の押し売り | |||
1957 | 芸術運動とは何か・原理論として/オールド・ジェネレーションへ | 『総合』1957/9 →芸低 | ||||
1957 | 戦後のアヴァンギャルド芸術をどう考えるか | 『ユリイカ』 1957/10 | ||||
1958 | 上部構造とは何か 文学とイデオロギー | 『思想』 1958/1 「文学に上部構造」と改題して →芸低 | ||||
1958 | 論争の予定 | 「群像」1958/1 | ||||
1958 | マスコミュニケーションにおける相互交流の問題 | 『思想』1958/1 | ||||
1958 | 芸術的抵抗と挫折 | 『講座現代美術 V 』 1958/4 →芸抵 | ||||
1958 | 街の中の近代 | 『東京大学新聞』1958/4/20 | ||||
1958 | 芸術運動とは何か | 『現代詩』1958/7 | ||||
1958 | 戦争責任への考え | 『読売新聞』 1958/1/15 | ||||
1958 | 政治と芸術‐大衆化現象の中で | 『図書新聞』1958/11/1 「情勢論 6」と改題して ->芸抵 | 『復興期の精神』のユートピア論批判(スガによる誤読の指摘) | |||
1958 | 転向論 | 『現代批評』1958/1 -> 芸抵 | 中野重治 | |||
1958 | リーダー論(吉本・鶴見俊介・橋川文三) | 『日本読書新聞』1958/12/1 | 三人の座談会 | |||
1958 | 新人診断‐冬枯れの避暑地から | 『日本読書新聞』1958/12/22 「夏炉冬扇」と改題->冒日 | ||||
1959 | 死の国の世代へ‐闘争開始宣言 | 『日本読書新聞』 1959/1/1 | ||||
1959 | 戦後文学大批判 | 「群像」*1959/1「二つの絵-戦後文学大批判」と改題->近代 | ||||
1959 | プロレタリア文学批判をめぐって | 「文学」1959/1->近代 | ||||
1959 | 不許芸人山門‐花田清輝老への買いコトバ | 『日本読書新聞』1959/1/12 | ||||
1959 | 文芸時評・あたらしい国民文学 | 『図書新聞』1959/1/17 「「大菩薩峠」と戦争責任」と改題->冒日 | ユートピア論批判誤読の指摘 | |||
1959 | 反論‐吉本隆明に | 『日本読書新聞』1959/1/26「吉本隆明に」に改題->冒日 | 「提案。ヒゲをはやしてみては、如何」 | |||
1959 | 『乞食論語』執筆をお勧めする‐バカの一つおばえ”前衛党なくして” | 『日本読書新聞』1959/2/2 | ||||
1959 | 埴谷雄高 「苛酷な現実と苛酷な眼‐不思議な無恐怖がそこにはある」 | 『日本読書新聞』1959/3/16 | 吉本の勝ちと判定 | |||
1959 | アクシスの問題 | 『近代文学』 1959/4 | ||||
1959 | 笑って騙せ | 『中央公論』 1959/4 近代 | 天皇の戦争責任追及 | |||
1959 | 芸術大衆化論の否定 | 『現代批評』1959/4 | ||||
1959 | ノーチラス号反応あり | 季刊『現代芸術 3』 1959/6 | ||||
1959 | 『常民』の論理 | 『図書新聞』1959/6/27冒日 | ||||
1959 | 埴谷雄高「決定的な転換期」 | 『群像』1959/6 | ||||
1959 | 詩人の戦争責任論―文献的な類型化― | 『国文学 解釈と鑑賞』 1959/7 | ||||
1959 | 異端と正系 | 『現代詩研究』 1959/7 | ||||
1959 | 転向ファシストの詭弁 | 『近代文学』 1959/9 | 吉本の決めセリフ | |||
1959 | 海老すきと小魚すき | 『民話』 1959/9 | ||||
1960 | 役割の遊戯 | 『映画評論』 1960/2 新編映画 | ||||
1960 | 日本ファシストの原像 | 『現代の発見 第三巻 戦争責任』 1960/2 | ||||
1960 | 大衆芸術運動について | 『思索と生活』 1960/3/8 | ||||
1960 | 映画的表現について | 『キネマ旬報』 1960/3下、5下 | ||||
1960 | 誤解する権利 | 『群像』 1960/4 | ||||
1960 | 『慷慨談』の流行 | 『中央公論』 1960/4-> 修羅・東洋 | ||||
1960 | 映画ジャーナリズム論 | 『日刊スポーツ』 1960/5/11 新編映画 | ||||
1960 | 擬制の終焉 | 『民主主義の神話―安保闘争の思想的総括―』、1960/9 擬制 | ||||
1960 | 風の方向 | 『現代芸術』 1960/10 | ||||
1960 | 鹿の巻筆 | 『群像』 1960/12 | ||||
1961 | さしあたってこれだけは(吉本・関根弘・谷川雁) | 『現代詩』 1961/3 | 三者の座談会 | |||
1961 | 六・一五事件と私―花田清輝氏に一言 | 『週刊読書人』 1961/11/27 | ||||
1961 | 前衛的コミュニケーションについて | 『先駆』 1961/12 -> 擬制 | ||||
1963 | 左翼文学(花田・吉本・平野謙・野間宏) | 『群像』 1963/10 | 「最終的な両者の立場確認」 | |||
1964 | 『花田清輝著作集 II』 | 『図書新聞』 1964/1/25」 | ||||
1964 | 『近代文学派』の問題 | 『群像』 1964/7 |
「二つの絵」は、講談社文芸文庫『近代の超克』だと、初出が『中央公論』1959/1 の様に書いてあるけれど、同書巻末の年譜や添田馨『吉本隆明‐論争のクロニクル』では『群像』1959/1 になっている。
できれば、概説を読んだあと、発表順に読んでいくべきだと思うが、手に入ったところから読んでいってまとめていく。